歯科衛生士コラム 歯科衛生士コラム

2022/08/29

歯科衛生士がやってはいけないことは?歯科衛生士と歯科医師の違いについてご紹介します。

歯科衛生士が対応できる業務範囲は、あらかじめ法律によって定められています。
逆に言えば歯科衛生士には「やってはいけないこと」がいくつかあり、それを破ると大きな問題になる恐れがあるのです。

歯科衛生士がやってはいけないことは、主に歯科医師の業務範囲に含まれています。
そのため歯科衛生士と歯科医師の違いを把握することが、やってはいけないことを知るための近道になるでしょう。

本記事では歯科衛生士がやってはいけないことと、歯科医師との違いについて解説します。

歯科衛生士がやってはいけないこととは?

歯科衛生士がやってはいけないことは、日常的な業務のなかにもたくさんあります。
そのため事前に知識を持っていないと、意図せずにやってはいけないことを行ってしまう危険があるでしょう。

以下からは、歯科衛生士がやってはいけないことを具体的に紹介します。

「絶対的歯科医行為」に分類されること

歯科衛生士がやってはいけないことは、「絶対的歯科医行為」に分類される行為です。
絶対的歯科医行為とは、原則として歯科医師しか行えない治療行為のことを指します。

例えば患者さんの歯や神経を抜く、歯を削る、歯茎を切る、歯に詰め物を入れる、被せ物を装着する、注射で麻酔を打つといった行為が、絶対的歯科医行為です。
これらの業務は歯科医師でなければできないものになるため、歯科衛生士はやってはいけないことになります。

歯科衛生士も患者さんの口内をケアしたり、薬物の塗布などを行ったりするため、上記のような治療行為もできると勘違いされがちです。
しかし、絶対的歯科医行為に分類されるものは例外なく業務の範囲外となるので、該当する内容を事前に確認して、間違っても歯科衛生士が対応しないように備えましょう。

また、上記の治療行為の他にも、レントゲンの撮影も厳密には歯科衛生士がやってはいけないことになります。
レントゲンの撮影はできないのですが、レントゲン撮影の準備や患者さんへの説明に関しては、歯科衛生士でも対応可能です。

しかし、レントゲン撮影を実際に行うためのボタンを押す行為などは、歯科医師の担当領域になるため注意しておきましょう。

「相対的歯科医療行為」は歯科医師の監視下であれば行っても問題ない

絶対的歯科医行為は、何があっても歯科衛生士がやってはいけないことですが、「相対的歯科医療行為」に関しては、歯科医師の監視下であれば行っても良いとされています。
相対的歯科医療行為とは、例えば表面麻酔薬を口内に塗布する、歯石や歯垢を除去する、ホワイトニングを行うといった業務が当てはまります。

また、歯の矯正治療における奥歯へのバンド装着やワイヤー交換なども、歯科衛生士がやってもいい相対的歯科医療行為になります。

上記の業務は歯科衛生士でも対応できますが、あくまで「歯科医師の監視下」であることが条件です。
歯科医師がいない状況で上記の行為を自分の判断で行った場合、違法行為となってしまいます。

相対的歯科医療行為を行う際には、必ず歯科医師の指示を受けた上で作業をするように徹底しましょう。

やってはいけないことを歯科衛生士がしてしまうとどうなる?

歯科衛生士がやってはいけないこと、例えば絶対的歯科医行為に分類される業務や、歯科医師がいないにも関わらず相対的歯科医療行為を行った場合には、歯科衛生士法に違反した罪で罰せられることになります。
実際に歯科衛生士がやってはいけないことを行ったために、歯科医師と歯科衛生士が逮捕された事例もあるのです。

決して軽い処遇では済まないため、歯科衛生士として働く際には禁止行為についてしっかりと調べておく必要があるでしょう。

また、就職先によっては、相対的歯科医療行為に対する認識が甘く、歯科医師がいなくても歯科衛生士が歯垢除去やホワイトニングを行うことが当たり前になっていることがあります。
当然違法行為となるため、もし現状が露呈すれば上記の事例のように逮捕される可能性もあるでしょう。

職場で強制されてしまうと、なかなか断りづらいこともあるでしょうが、そこは上記で解説した内容を参考にしてキッパリと拒否する勇気が必要です。

歯科衛生士と歯科医師の違いについて

歯科衛生士がやってはいけないことについて知るには、歯科医師との違いを把握することがポイントです。
歯科衛生士と歯科医師の違いが明確にできれば、自分が何をしてはいけないのかがすぐに判断できます。

仕事をする上で適切な業務内容を把握する基盤になるので、以下を参考に歯科衛生士と歯科医師の違いについても確認しておきましょう。

歯の治療行為を行えるのが歯科医師の特徴

歯科医師とは、歯の治療行為を行える職業を指します。
先に紹介した絶対的歯科医行為と相対的歯科医療行為の両方を行うことができ、歯科医院の中心業務を担える存在です。

歯に関する治療行為のほとんどは歯科医師しか行えないため、歯科医院にとってもっとも重要な職業になるでしょう。

治療行為以外にも、歯科医師は歯に関する薬の処方が許されています。(一般的な病気を治すための薬を処方することはできない)
また、舌がんなど口腔内で行われる手術に関しては、医師に限らず歯科医師でも対応が可能です。

歯科衛生士が担当できるのは「三大業務」に含まれるもの

歯科衛生士は、先に挙げた相対的歯科医療行為を歯科医師の監視下で行う他に、「三大業務」と呼ばれる仕事を担当できる職業です。
歯科衛生士の三大業務とは、「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3つの業務を指す言葉となっています。

歯科予防処置では虫歯や歯周病などの疾患を予防するために、フッ化物の塗布を行ったり、歯石や歯垢を取り除いて口腔内の状態を清潔に保ったりする処置が行われます。
虫歯や歯周病の治療ではなく、そこに至る前の予防を担当するのが、歯科衛生士の役割です。

歯科診療補助とは、歯科医師が行う診療および治療のサポートを行う業務です。
診療・治療がスムーズに進むように、必要な器具の受け渡しや片付けなどの雑務を担当します。

歯科保健指導は、人々が自分の歯のセルフケアを行えるように、歯磨きの方法や口内ケアのやり方を専門知識を使って指導する行為です。
学校や介護施設を訪問して直接指導することも可能なため、あらゆる場所で歯科保健指導が行えます。

上記の三大業務に関しては、歯科衛生士の担当領域となります。

まとめ

歯科衛生士は、法律上やってはいけないことがいくつかあります。
知らずに対応してしまったとしても、それは違法行為として認定されてしまうため、歯科医師との違いも含めてしっかりと事前に予習を行っておきましょう。